個展 時と言葉と血と此の場

2013.9.11-22 小金井アートスポットシャトー2Fにて

出展リスト(制作年はいずれも2013)
1.時と言葉と血と此の場
2.フリースタイルマンション(ノンサイト)
3.elements
4.デジタル時計
5. カミグラフィー

(展示あいさつ文より)

このたび、個展を開くこととなりました。僕の祖母は書道家なのですが、その作品を組み込んだ新作映像インスタレーションを発表します。ですので「個展」といっても、祖母との「二人展」に近いものかもしれません。 しかし僕としてはあくまでも「個展」だと思っています。なんの因果か現代美術をやっている自分が、今回はその「血筋」や「時間(家族史)」を素材とした、そう捉えています。みなさまの御批評・御指導を賜ることができれば甚だ幸いです。

占い師が彫り付けた数千年前の甲骨文字から、数多の書家の手を経て祖母・橋本華苑がかたちにした彼女の書表現。これを鍵として、数千年の言葉の歴史と、祖母の生きた84 年と、僕の生きた24 年を展示会場で結び合わせるというミッションを、本展のタイトル「TOKITOKOTOBATOTITOKONOBA(時と言葉と血と此の場)」は表しています。

***以下は各作品のファクトシート

時と言葉と_ポートフォリオ用web

1.時と言葉と血と此の場
ビデオインスタレーション( ループ29分) [DVD・プロジェクター・橋本華苑による書作品・作家幼少時による書作品]

メインとなる映像スクリーンでは、作家の実の祖母である書家・橋本華苑のドキュメンタリー的映像や、作家による「文字や祖母を扱ったパフォーマンス」の記録、また今回の展覧会準備の映像などがめくるめく編集によって繋げられる。会場に展示されている作家幼少時の書や橋本華苑による大小の書作品は、映像にも登場する。

【橋本華苑】はしもとかえん 1928年富山生まれ。書道家。師:金子鷗亭漢字・近代詩文書の作家として現在も活躍。
全日本書道連盟会員/毎日展参与会員/創玄書道会審査会会員/日本詩文書作家協会評議員/青華書道会主催

***

Pフリースタイルマンションw

 

2.フリースタイルマンション(ノンサイト)
DVD・ブラウン管テレビ・机・ライト・スクリプト

展示の前に、私がプライベートで会った知人に対して「フリースタイルマンション」というパフォーマンスを披露する期間を設けている。
(twitterやfacebookによって告知している)。それは3分程度の時間と立って声を出せる環境があれば出来る、そのときに会った人と場所をテーマとしたフリースタイルラップ(のようなもの)である。これらの記録映像を編集によってつなぎ、そのスクリプトと共に展示する。

***

elements_w

3.elements
DVD・甲骨文字(ループ上映 12 分)

「作家の身の周りの映像」に対して「甲骨文字(古代の中国で使われた文字)」を合成している。文字という「普遍的なもの」と 撮りためた映像という「主観的なもの」、「現代」と「古代」などが、対比されながらレイヤー状に重なるという構造を持つ。

***

デジタル時計

4.デジタル時計
パフォーマンス(ビデオカメラ・モニター・文房具・紙・時報)

スピーカーから時報が流れている。その時報に合わせ、文房具を使って「現在の時刻」を表す4桁の数字をつくる。書かれた数字の支持体である紙が次の瞬間には鋏で数字の形に切り抜かれたり、数字オブジェを貼り合せるのに使っていたセロハンテープが次の瞬間にはそれ自体で「6」を表すなど、パフォーマンスならではの異化効果が目まぐるしく展開される。手元の数字はカメラで撮影・モニタリングされ、パフォーマンスの時間が物質として痕跡を残すタブローが結果として完成される。

***

カミグラフィー

5. カミグラフィー
オーダーメイドによるコラージュ作品

紙を素材とし「折る・切る」などの技法で、文字としての機能をもつオブジェを作る行為とその作品である。作家が常駐しており、希望するお客さんの名前(ローマ字)をモチーフに即興的な〈カミグラフィー〉を制作する。できあがった実物はお持ち帰りいただく。完成品は ぱっと見ただけでは文字として判別しづらいが、どの部分がどのアルファベットであるかという「読み方」を作者と依頼者(名前の持ち主)だけが知っているという状況が生まれる。